こんにちは!
今年も全国各地で夏の甲子園への切符を手にするべく、これから都道府県大会が続々と開幕していきますね。僕は兵庫県の高校野球をよく観ているのですが、いつも兵庫は面白いな~とつくづく思います。こんなに面白い地区は他を探してもなかなかないのでは、と思うほどです。兵庫野球には、兵庫野球にしかない独特の魅力があるように感じます。一体何がそんなに僕たちを惹きつけるのでしょうか。
今日は、そんな兵庫県の高校野球の魅力についてたっぷりと語りたいと思います!どうぞ宜しくお付き合いください!
魅力その① とにかく群雄割拠!
皆さんは、兵庫の強豪校といえば?と聞かれると、どの高校が思い浮かぶでしょうか。県外の方ですと、報徳学園や神戸国際大付、オールドファンは東洋大姫路や育英などの名前を挙げられるでしょうか。
これが県内人になると、報徳、国際、東洋、育英の他に、明商(メイショウ:明石商)、社、滝二(タキニ:滝川第二)、神港(神港学園)、弘陵(神戸弘陵)、東播磨(ヒガハリ)、市尼(イチアマ:市立尼崎)関学(カンガク:関西学院)などなど、次から次にいろんな答えが返ってくるでしょう。そう、兵庫県の高校野球の最大の特徴と言えば、全国でも指折りの群雄割拠県なのです。
どれぐらい群雄割拠なのか、下記の表をご覧いただければわかりやすいかと思います。
代表校数 | 都道府県 |
8 | 北北海道、香川、福岡 |
7 | 秋田、京都、兵庫、愛媛、佐賀、宮崎 |
6 | 茨城、千葉、西東京、三重、岡山、広島、鳥取、島根、山口、熊本 |
5 | 南北海道、山形、静岡、愛知、岐阜、福井、長崎、大分 |
4 | 青森、宮城、群馬、埼玉、神奈川、山梨、東東京、富山、長野、石川 滋賀、奈良、大阪、鹿児島、沖縄 |
3 | 岩手、新潟、和歌山、徳島 |
2 | 福島、栃木、高知 |
これは、2012年~2022年までの夏の選手権直近10大会(2020年は中止)で各都道府県から輩出された代表校数です。校数が多いほど群雄割拠であり、少ないほど代表枠を少数の高校が占拠している状態、ということになります。全国的に見ると、多くの都道府県においては夏の甲子園に出てくる高校は10大会中4~6校程度に絞られており、福島、栃木、和歌山、徳島、高知などはほぼ1強状態に陥っています。そんな中、兵庫県は10大会で実に7校もの別々の高校が優勝しており、これは全国4位タイの群雄割拠ぶりとなっています。
毎年、どこが優勝するのかわからない予想が難しい兵庫県大会は、それだけで観ているファンにとっては非常に面白いコンテンツとなっているのです。
なぜここまで群雄割拠なのかと言うと、それは人材の分散がもっともな理由でしょう。もともと高校数が多い上、各校が有望選手の獲得に力を入れているということと、有能な指導者が多く分散しているため、選手側がそれぞれ自分に合った、希望する監督の指導を受けるべく分散する、という構図があります。
魅力その② 好投手が多い!
兵庫県の高校野球の2つ目の大きな特徴としてよく挙げられるのが、好投手が多いという点です。昔からよく「投手王国」と言われているように、毎年のように複数の高校でプロ注目投手が現れ、実際に数多くの好投手をプロに輩出しています。その証拠に、以下に兵庫県の高校出身の主な現役プロ投手を挙げてみます。
選手名 | 出身校 | ドラフト年・順位 | 経歴 |
宮西 尚生 | 市尼崎 | 2007 大・社③ | 関西学院~日ハム |
松葉 貴大 | 東洋大姫路 | 2012 ① | 大体大~オリックス~中日 |
増田 達至 | 柳学園 | 2012 ① | 福井工大~NTT西日本~西武 |
原 樹里 | 東洋大姫路 | 2015 ① | 東洋大~ヤクルト |
福 敬登 | 神戸西 | 2015 ④ | JR九州~中日 |
才木 浩人 | 須磨翔風 | 2016 ③ | 阪神 |
田村 伊知郎 | 報徳学園 | 2016 ⑥ | 立教大~西武 |
山本 拓実 | 市西宮 | 2017 ⑥ | 中日~日ハム |
東 晃平 | 神戸弘陵 | 2017 育成② | オリックス |
松本 航 | 明石商 | 2018 ① | 日体大~西武 |
甲斐野 央 | 東洋大姫路 | 2018 ① | 東洋大~ソフトバンク |
佐藤 直樹 | 報徳学園 | 2019 ① | JR西日本~ソフトバンク |
村西 良太 | 津名 | 2019 ③ | 近畿大~オリックス |
平内 隆太 | 神戸国際 | 2020 ① | 亜細亜大~巨人 |
山崎 伊織 | 明石商 | 2020 ② | 東海大~巨人 |
中森 俊介 | 明石商 | 2020 ② | ロッテ |
翁田 大勢 | 西脇工 | 2021 ① | 関西国際大~巨人 |
西垣 雅矢 | 報徳学園 | 2021 ⑥ | 早稲田大~楽天 |
このように、実に多くの兵庫人投手がプロの世界で活躍しています。さらに言うと、これらはあくまで兵庫県の高校出身の投手であり、これら以外に、県外の高校に進学した主な兵庫県出身投手として田中将大(楽天)や床田寛樹(広島)、村上頌樹(阪神)などがいるのです。
こうして見ると、東洋大姫路、報徳学園、明石商が多くの投手を輩出していますね。また、これら強豪校だけでなく、あまり甲子園に出場しないような公立校からも好投手がポンっと出てくることがあり、毎年のように話題を提供してくれるところが面白い点です。
甲子園のお膝元である兵庫県は昔から野球が盛んであり、きっと優秀な指導者が多いのでしょう。まさに人材の宝庫と言えますね。
魅力その③ 僅差の接戦が多い!
3つ目の特徴として、兵庫県の高校野球は実に僅差の接戦が多く、これも見る者を楽しませてくれる要素となっています。魅力その①の群雄割拠ぶりもあり、県大会はベスト16あたりから既に僅差の試合ばかりとなり、準決勝以降になると試合が完全に均衡し、勝敗は時の運となることがほとんどです。この傾向は、消耗が激しい夏よりも、選手のコンディションが良い秋季、春季に如実に表れます。
試合内容としてはとにかくロースコアの非常に引き締まったゲームが多数を占めるのですが、その原因は魅力その②の「好投手が多い」ことにあると僕は考えています。好投手が多いということは、打線がなかなか点を取れず、1点を守り切るようなゲームを制することが要求されます。そうなると、どうしても守備型のチームが量産され、全体的に守備力が強化されます。兵庫の高校野球を観ていると、どのチームも本当に守備がよく鍛えられているなと感じます。甲子園で兵庫代表校が守備崩壊する姿を見ることなども、滅多にありません。この高い守備力があるからこそ、シビれる試合展開が生み出されるのです。
一方、打線は繋がりに欠けてしまうためスモールベースボールが主体となり、とにかくバントでランナーを進め、機動力を絡めて1点を取りに行く緻密な野球になりがちです。こうして、試合は必然的に1点を争うロースコアの引き締まったものが多くなるのではないでしょうか。
魅力その④ 公立校が強い!
高校野球ファンもそうでない人も、老若男女問わず公立校を応援する人は割と多く存在します。全国的に強豪私学が台頭し、甲子園に出てくる公立校が減ってから久しいですが、オールドファンや自身が公立校出身だったという人は、公立校贔屓になる傾向が強いです。そんな人たちにとって、私立と公立のパワーバランスが均衡している兵庫野球は絶妙に面白いのではないでしょうか。
関東、中京、関西といった大都市圏においては、私立優勢の都府県が圧倒的に多いのですが、そんな中で兵庫県は異例と言ってもいいぐらい、公立校が健闘しています。以下の表で、夏の直近5大会のベスト8校を公私立別に分けて並べてみたのですが、見事にレベルが拮抗していることがわかります。
年 | 公立校 | 私立校 |
2022 | 加古川西、長田、社、 明石商 | 神戸国際、市川、滝川二、 神戸学院大付 |
2021 | 東播磨、社、兵庫工 | 報徳、神戸国際、東洋大姫路、 滝川二、関西学院 |
2019 | 社、小野、加古川西、 高砂、姫路南、明石商 | 神戸国際、育英 |
2018 (東西4強) | 市尼崎、明石商、小野、 東播工、姫路工 | 神戸国際、報徳、村野工 |
2017 | 明石商、市西宮 | 市川、育英、滝川二、 報徳、関西学院、神戸国際 |
さらに、直近10大会の夏の選手権代表校7校のうち、公立が4校(西脇工、市尼崎、明石商、社)、私立が3校(滝川第二、神戸国際、報徳学園)と、こちらも見事なせめぎ合いとなっています。もちろん、公立校でありながら私立並みに設備や環境が整っていたり、各所から有望な選手を集めているだろう、という声もあるでしょうが、それでも大都市圏でここまで公立校が頑張っている地域は、近年では他に類を見ません。せいぜい、習志野や市船橋がいる千葉か、鳥羽や乙訓がいる京都ぐらいしか思い浮かばないです。
ただでさえ群雄割拠な上、強豪私学を破る公立校が数多存在する兵庫県は、多くの人にとって応援しがいがあり、親しみやすさも感じさせる魅力があると言えます。
魅力その⑤ どこが代表になっても楽しめる!
夏の選手権における兵庫県代表の通算成績は、2022年時点で144勝97敗、勝率は.598で、これは現在全国7位を誇っています。また、優勝回数は7回で、これは全国4位タイの多さです。この成績が示す通り、兵庫県の高校野球は全国的に見てレベルが高いと言えます。着目したいところが、この7回の優勝は全て違う高校が成し遂げているという点です。
さらに、直近10大会の成績は13勝11敗となっていますが、注目すべき点が、2018年、2019年、2021年と、報徳、明石商、神戸国際のそれぞれ違う高校が3大会連続でベスト8に進出しているということです。
2010年以降、甲子園において同一都道府県の別々の高校が3大会連続でベスト8に入ったのは、東京、兵庫、福岡しかいません。さらに、福岡はセンバツの話であり、東京は東西の2枠で成し遂げた成績ですので、夏の兵庫代表のこの記録は快挙と言えるでしょう。
前述の通り兵庫の高校野球は上位に行けば行くほど緻密さが増し、実力が拮抗し、勝敗は時の運となり、どこが優勝するか全く読めなくなるのですが、非常に高いレベルで拮抗しているため、どこが甲子園に出てもそこそこの試合をやってくれます。これまでセンバツに21世紀枠で出場した洲本、長田、東播磨といった中堅公立校でも、敗れはしたものの3校とも1点差負けの接戦を演じています。これは、兵庫の上位校が軒並み全国レベルで戦えるということを示唆しています。
「どこが出てもやってくれそうだ」と思えるだけで県民はワクワクして代表校の試合を楽しむことができますし、期待を寄せ、応援したくなるのです。
県勢の全国制覇が見たい!
ここまで述べてきたように多くの魅力に溢れる兵庫の高校野球なのですが、実は全国制覇からは長い間遠ざかっています。最後の優勝は、センバツは2002年の報徳学園、選手権は1993年の育英にまで遡ります。この間、ベスト8やベスト4までは何度も進出していたのですが、「ベスト4の壁」問題に長年苦しめられていました。今春のセンバツでは報徳がついにこの壁を突破し決勝まで上り詰めたのですが、あと一歩のところで優勝を逃しました。
強豪ひしめく全国大会において、常に存在感を見せつける兵庫代表。そろそろ、久しぶりに全国制覇を成し遂げる瞬間を見たいところですが、そのためにはどうすればいいでしょうか。
解決策として、人材の分散を止める、ということがあります。魅力その①で述べたように、兵庫は全国的に見てかなりの人材分散県となっています。また、甲子園出場チームのプロフィールを見ているとよくわかるのですが、兵庫人は全国にも散らばっており、多くのチームに兵庫人が何人かベンチ入りしている、というのが常態化しています。
皆さん、2010年以降の選手権優勝校を思い出してみてください。例外なく、1~3強ぐらいしかない都府県の代表が優勝していることに気づくはずです。これらの都府県は、県内外の有望な選手を1~3校ほどで囲うことができており、選手の分散をある程度抑制できていると言えるでしょう。一方、兵庫は人材が多数の高校に分散しています。人材が分散するということは、群雄割拠になり、代表として甲子園に出場できる機会も分散します。そうなると、確実に甲子園に出場して名を売りたいと考える選手は、県外に流出します。兵庫県は長年このような“分散ループ”が続いているのです。
この状況を打破するためには、他県のように少数の強豪私学で有望選手を囲うことが有効でしょう。現在、県内外あらゆる場所に分散している兵庫の選手が1つにまとまれば、あっという間に全国制覇できるだろう、と僕は勝手に考えています。
ですが、「じゃあ、そんな兵庫野球が見たいか?」と聞かれると、僕の答えは「No」です。全国制覇のために1度くらいそのような時期があってもいいとは思いますが、僕はやっぱりどこが優勝するかさっぱりわからない、ハラハラドキドキのドラマ性に富んだ今の兵庫野球が大好きです。人材が分散している状態のまま全国制覇を成し遂げられたら、それこそ兵庫県全体の野球レベルの高さを全国に示すことになり、まさに僕の望むところはそこです。
おわりに
以上、長々と兵庫野球の魅力について語ってきました。ここで正直な心情を吐露すると、純粋に高校野球の試合を楽しむ場合、僕は甲子園よりも兵庫県大会の方が面白い、とさえ思っています。もちろん、甲子園の試合のレベルは高いのですが、野球というスポーツはレベルを問わず接戦になればなるほど面白いため、甲子園で大差のワンサイドゲームを観るよりは、兵庫県の上位校のレベルの高い拮抗した試合の方が見応えがあると感じます。また、甲子園に負けないドラマも毎年誕生しています。これだから、兵庫の高校野球ファンはやめられません。
兵庫県民もそうでない方も、是非今後兵庫野球に注目してみてください!各校とも、きっと期待を裏切らない戦いを見せてくれるはずですし、貴方もきっと虜になるでしょう!
それでは、ここまでお付き合いいただきありがとうございました!
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