【夏の甲子園2024】第106回全国選手権大会 総括&小ネタ集

入道雲と甲子園球場 高校野球

去る8/23、第106回全国高等学校野球選手権大会は無事に全日程を終え、京都国際の初優勝で幕を閉じました。今大会はどのような大会だったのか、僕の観戦記も交えて早速総括していきたいと思います。どうぞ宜しくお付き合いください!

開会式の様子(8/7)

京都国際が初優勝!準優勝は関東第一

甲子園開場100周年というメモリアルな年に栄冠を手にしたのは、京都代表の京都国際でした。春夏通じて自身初優勝であり、京都勢としても1956年の中京以来、68年ぶりの夏制覇という快挙です。
京都国際は3年生の中崎くん、2年生の西村くんの強力なW左腕エースが大会を通して終始好投を続け、チームを優勝に導く活躍を見せました。投手力だけで言うと、今大会では頭半分ほど抜けていたという印象です。打線も新基準バットにうまく適応している感じで、芯を捉えて低い弾道で鋭く振りぬき、次々と安打を重ねてチャンスをものにしていました。まさに今大会は向かうところ敵なしといった状態に仕上がっており、どの高校にとってもイヤな相手だったと思います。

思えば僕が初めて京都国際の試合を観たのは6年前の2018年秋季近畿大会であり、当時は全く耳馴染みのない新興校でしたが、1回戦で中森・来田擁する明石商を終盤まで苦しめるほどの強さを見せ、非常に手強いチームという印象を受けたのを覚えています。それから京都国際は今大会を含め春2度、夏3度甲子園に出てくるほどの強豪校となり、プロ選手も数多く輩出するほどの部に成長しました。開校自体が2004年という新しい学校(前身の京都韓国学園は1947年設立)でありながら、短期間でのこの躍進には本当に驚くばかりです。
そんな京都国際は今年、春季大会で近畿王者に登りつめた勢いそのままに、一気に全国の頂点に駆け上がりました。投打がガッチリ噛み合った、素晴らしいチームでした。優勝おめでとうございます!

2回戦勝利時の京都国際(8/14、対新潟産大付戦、一塁側)

史上初となった決勝戦でのタイブレークで敗れ、惜しくも準優勝となった関東第一も、攻守のバランスに優れた非常に強いチームでした。昨秋の神宮大会から既にその戦力は高く、僕もこの一年間は関東第一の強さをアピールしてきましたが、まさにその実力通り夏の決勝まで勝ち上がりました。畠中くん坂井くんといった投手陣の活躍もさることながら、今大会特に光ったのがその堅守っぷりであり、守備陣が随所でピンチを凌いで見事接戦をものにしてきました。新基準バット導入によりこれからの高校野球では守備力や機動力の強化が重要になってくると多方面で言われていますが、関東第一はその模範となるような戦いぶりを示しており、今後も非常に楽しみなチームだと思います。準優勝おめでとうございます!

大会全体の印象

今大会はベスト8に近畿3校、関東・東京2校、東北、中国、九州が1校ずつ残り、近畿勢が頑張りを見せる中で各地方の代表校がバランスよく勝ち上がりました。しかし、優勝候補と目されていた健大高崎、大阪桐蔭、報徳学園などが軒並み早々に敗れ、智弁和歌山や花咲徳栄、広陵、中京大中京といったネームバリューのある高校もベスト8に残らないという、波乱の結果となりました。強豪私学とその他の新興校、実力校との差がこれまでよりも縮まっているように感じました。観る側にとっては、僅差の接戦や番狂わせが多く、どこが優勝するのか全く読めない面白い大会になったと思います。
その中で今大会の目玉となったのは、なんと言っても大社でしょう。好投手・馬庭くんを中心とした守りの堅い大社は、初戦で優勝候補の報徳学園を破ると、2回戦の創成館戦を延長タイブレークの末撃破し、107年ぶりに夏の選手権で2勝を成し遂げました。続く3回戦では早稲田実を相手に堂々と渡り合い、1点ビハインドの9回裏に土壇場で同点に追いつくと、延長11回までもつれ込んだタイブレークをサヨナラで制し、劇的な勝利を収めました。ベンチ入りメンバーのほぼ全員が地元の島根っ子である公立の大社のこの快進撃は、島根県民のみならず多くの高校野球ファンを魅了し、爽やかな「大社旋風」を巻き起こしました。非常に魅力的な好チームでしたね。

新基準バット導入後の最初の選手権となった今大会は、センバツと同様に長打や本塁打が少なく、ロースコアの試合が多くなりました。例年、夏は打高投低の傾向が強かった高校野球に、大きな変化が訪れた大会だったと言えるでしょう。本塁打は全48試合で7本しか出ず、金属バットが導入された1974年以降で最低の記録となりました。それだけでなく、これまでなら内野手の間を抜けていたような鋭い打球は内野ゴロになり、外野手の頭を超えるような打球が外野フライに止まっていたような印象を受けました。フィジカルを鍛えパワーヒッティングで長打を量産する、所謂「金属打ち」を得意としてきた強豪私学が、今大会は軒並み爆発力がなく、早々に甲子園を去ることとなりました。中でも、2回戦で大阪桐蔭が小松大谷の西川投手に5安打完封負けを喫した試合はとても印象的でした。大阪桐蔭が夏の甲子園で完封負けを喫したのは50戦目にして初の出来事であり、さらに西川くんは92球で完封というマダックスまで達成したということで、高校野球界に衝撃が走った試合でした。

2回戦、小松大谷-大阪桐蔭終了時。大阪桐蔭は夏の甲子園で自身初となる完封負けを喫した。(8/14)

この投高打低の流れの中、一方の投手陣は力で押し切る本格派ではなく、打者の手元で曲がる変化球を駆使してバットの芯を外す、打たせて取るタイプの軟投派投手の活躍が目立ちました。特に今大会は大社の馬庭くんをはじめ、京都国際の中崎くん・西村くんのWエース、神村学園の今村くん、関東第一の畠中くん、智弁学園の田近くんといった、軟投派左腕が数多く躍動したのが特徴的でした。
今後まだ数年は投高打低の傾向が続くと思われますが、これから全国の各チームがこの新基準バットにどう対応していくのか、高校野球がどう変化していくのか、非常に楽しみです。

しんのG観戦ベストマッチ

今大会、僕は8日間の計26試合を現地観戦することができました。
今大会のハイライトと言えば、やはり3回戦の早稲田実-大社の激戦に最もスポットが当てられると思いますが、この試合僕はテレビで観ており、現地にはいませんでした。
現地観戦した試合の中で最も痺れた試合は、2回戦の智弁和歌山-霞ヶ浦でした。この試合は3点ビハインドで窮地に立たされた智弁和歌山が、8回裏になんと2者連続ホームランで同点に追いつき、延長戦までもつれこむという熱戦となりました。この衝撃的な同点劇に甲子園は大きなどよめきが沸き上がり、さすがに僕も鳥肌が立ちました。ただ惜しいことに、この試合が9回までに決着がついていたら間違いなくしんのGベストマッチだったのですが、タイブレークに突入してしまったため受賞とはなりませんでした。

そんな中、僕が選んだ今大会のベストマッチは、3回戦の明徳義塾-関東第一に決定しました。名門校同士の対戦となったこの試合はとにかく流れがどっちつかずで行き来し、最後まで勝負の行方がわからない手に汗握る攻防となりました。2回表に関東第一が先制するも、3回裏に明徳が逆転、その後5回と6回に関東第一が1点ずつ取り、再度逆転するという試合展開でした。終盤、明徳は再三チャンスを作りますが、関東第一の堅守がこれを阻み、結果関東第一が粘り勝ちしました。両チームともに守備が良く、随所に光るプレーがあり、非常に見応えのある攻防を終始繰り広げてくれました。9回以内に終わった試合の中では、最も面白かった好ゲームでした。

3回戦、明徳義塾-関東第一終了時(8/16)

しんのG観戦ベストプレー

いつものことですが、今年も数多くの好プレーをこの目で見ることができました。その中で個人的に最も目を奪われたプレーは、智弁和歌山の高桑京士郎くんが2回戦の対霞ヶ浦戦で見せた見事な捕殺です。
この試合で、高桑くんは6回裏に代走として途中出場し、7回表からレフトの守備についていました。その7回表、3点ビハインドでこれ以上の失点は許されない状況となった智弁和歌山は、2アウトながらもランナー1・2塁のピンチを迎えました。そして霞ヶ浦の4番・羽賀くんの打った打球は三遊間を抜けるヒットとなり、2塁ランナーは本塁に突入します。そこでボールを掴んだ高桑くんは、ホームへ素晴らしい送球をし、このランナーを見事に捕殺しました。この瞬間、甲子園は沸きに沸き、それまで嫌なムードだった智弁和歌山サイドに流れがグッと引き寄せられるのを肌で感じることができました。

高桑くんの活躍はこれだけに留まりませんでした。8回裏、ランナーを一人置いて打席に立った高桑くんは、なんとレフトスタンドへ2ランホームランを放ったのです。これは後出しじゃんけんではなく本当のことなのですが、僕はこの時打席に立つ高桑くんから何かやってくれそうなオーラをバンバン感じ取っており、期待に胸を膨らませていました。すると高桑くんは最高の形でその期待に応えてくれました。智弁和歌山は完全に息を吹き返し、この高桑くんが掴んだ流れは後続の4番打者・花田くんに継がれました。なんと花田くんも同じような弾道でレフトスタンドへホームランを叩き込み、2者連続ホームランで智弁和歌山はあっという間に同点に追いついたのです。
高桑くんの見事な捕殺は、まさに試合の流れを変える絶妙なワンプレーの典型であり、好守の後に好打が出るという例の典型にもなりました。今一度大きな拍手を送るとともに、しんのG観戦ベストプレー賞を贈呈いたします。
おめでとうございます!

智弁和歌山・高桑くん

しんのGベスト応援賞

さて、今大会のしんのGベスト応援賞の行方はどうなったでしょうか。アルプスの様子を振り返ってみましょう。
今大会の応援でまず目立ったのは、「オー・シャンゼリゼ」の流行です。今年はこのフランスの有名曲である「オー・シャンゼリゼ」を歌う高校が多く、僕が観た中でも鶴岡東、神村学園、明徳義塾、滋賀学園、京都国際、中京大中京などが得点時等に皆で歌っているのが印象的でした。パリオリンピック開催中だったことも関係していると思われますが、爽やかで明るく前向きになれる、良い選曲だと思いました。
一方、昨年爆発的に人気だった「盛り上がりが足りない」はこの一年ですっかり飽きられたようで、僕が覚えている限りでは花巻東ぐらいしかこの応援を聞きませんでした。この「盛り上がりが足りない」は地方大会でもチラホラは聞こえてきましたが、昨年に比べると明らかにやる高校が減っており、どうやら下火となったようです。僕はこの応援があまり好きではないので、個人的にこれは良い傾向だと思います。

そのような中で、今大会僕が最も魅了されたのは、掛川西の大応援団です。26年ぶりの夏の甲子園出場となった伝統校・掛川西ですが、8/10の1回戦では在校生・卒業生でつくる1500人の大応援団がバス46台で甲子園に乗り込んでいたようで、その他大勢のファンもアルプスに押しかけていました。掛川西の応援スタイルはクラシカルないわゆる「バンカラ」であり、学生服を着た応援団が指揮を執りながら、「大進撃」や「ダッシュKEIO」「ダイナマイトマーチ」など古くから学生野球で親しまれている曲に掛け声を合わせるのですが、驚くべきはなんと言ってもその大声量です。昨年しんのGベスト応援賞を受賞した慶応も凄かったのですが、掛川西の声量はそれに匹敵するほど凄まじく、他校とは明らかに一線を画していました。僕が昔観戦した静岡県大会でも掛川西の応援はものすごかったのを覚えているのですが、甲子園で増幅されたその声量は県大会の何百倍も迫力があり、度肝を抜かれました。
それと同時に、大応援団がアルプスを埋め尽くし、オールドスタイルの曲に合わせて必死に応援している姿を見て、これこそが甲子園の原風景だと痛感し、感動すら覚えました。この迫力は決してテレビでは伝わらない、現地でのみ体感できる醍醐味だと思います。近年の高校野球応援と言えば、とかく曲目や派手なブラスバンドばかりにスポットが向けられがちですが、本来の甲子園の魅力を引き立てるのはやはり大歓声・大声援なのだと改めて気づかされ、その日の帰り道にこのことを反芻する度に、なんだかとても良いものを見たなぁ、と幸せな気分になりました。

掛川西は毎年、新入生を対象とした応援団による応援指導が行われているらしく、新入生はこの特訓により伝統的に受け継がれる掛川西の”DNA”を魂に刻まれるそうです。甲子園で他を圧倒する大声援は、まさにこの特訓の賜物と言えるでしょう。掛川西応援団の皆さん、おめでとうございます!

大声援で甲子園を盛り上げた掛川西アルプス(8/10)

継続されたジンクス

以前から紹介している、「甲子園で大阪桐蔭に勝ったチーム、優勝できない説」は今大会も当てはまり、継続されることとなりました。(8試合連続記録に更新)

前述の通り、今大会は小松大谷が2回戦で大阪桐蔭を倒し、見事な番狂わせを起こしたのですが、続く3回戦で智弁学園に敗れてしまい、優勝は叶いませんでした。

年(大会)回戦勝利校スコアその後
2016(88回春)2回戦木更津総合4-1大阪桐蔭●準々決勝敗退
2017(99回夏)3回戦仙台育英2-1大阪桐蔭●準々決勝敗退
2021(93回春)1回戦智弁学園8-6大阪桐蔭●準々決勝敗退
2021(103回夏)2回戦近江6-4大阪桐蔭●準決勝敗退
2022(104回夏)準々決勝下関国際5-4大阪桐蔭●準優勝
2023(95回春)準決勝報徳学園7-5大阪桐蔭●準優勝
2024(96回春)準々決勝報徳学園4-1大阪桐蔭●準優勝
2024(106回夏)2回戦〇小松大谷3-0大阪桐蔭●3回戦敗退
甲子園、対大阪桐蔭勝利校と成績(2016~)

果たしてこの記録はいつまで更新されていくのでしょうか。来年も気になりますね。

おわりに

長くなりましたが、以上で2024年夏の甲子園の総括を終えたいと思います。今年は期待していた報徳学園が初戦で敗れてしまったため、個人的にはもの凄く寂しい大会となりましたが、酷暑の中でも熱中症に罹ることもなく、楽しむことができました。球児の皆さん、今年も熱い夏をありがとうございました!

高校野球界は早くも秋季大会に突入しています。新チームが始動したばかりのこの秋も、センバツに向けた熱戦が全国各地で繰り広げられるため、今後はこちらにシフトして引き続き高校野球を楽しみたいと思います。

それでは、ここまでお付き合い下さりありがとうございました!

筆者プロフィール
この記事を書いた人
しんのG

高校野球を年間60~90試合ほど現地観戦している関西在住の高校野球ファンです。近畿の高校野球の話題を中心に、ライト層からコア層のファンまで楽しめるような有益なブログを目指して投稿していきたいと思います。
また、音楽も好きなので、音楽関連の想いも綴っていきたいと思います。宜しくお願いします。

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