隠れ良盤コレクション#3 『Rings Around The World』/ Super Furry Animals (2001)

CDプレーヤー 音楽

このコーナーでは、「ファンは当然知ってるんだけど、世間にはあまり広く知られていない」という、隠れた良盤・名盤を紹介していきます。完全に僕の独断でセレクトしますが、決して聴いて損はないアルバムを紹介しますので、どうぞ宜しくお付き合い下さい。

3枚目に選んだCDは、2001年にリリースされたSuper Furry Animalsの5thアルバム、『Rings Around The World』です。

Super Furry Animalsについて

Super Furry Animalsは、1993年にイギリス・ウェールズのカーディフで結成された5人組のロックバンドです。ボーカル、ギター、作詞作曲を担当するグリフ・リースがバンドのフロントマンであり、1996年、1stアルバム『Fuzzy Logic』でメジャーデビューを果たすと、これがイギリス国内で高い評価を得、セールス面でも成功します。その後もコンスタントに作品を発表し続け、国内外で多くのファンを獲得し、人気を確固たるものとしました。普段洋楽と接しない人は全く知らないと思いますが、日本でもそれなりに人気があり、洋楽ファンなら誰でも名前を知っているほどの有名なバンドです。略称はSFA、日本ではスーファリ、或いはファーリーズという愛称で親しまれています。

音楽的特徴としては、基本的にはバンド・サウンドですが、エレクトリックやシンフォニック、アコースティックも多分に取り込まれた多彩なサウンドを奏でるポップなバンドと言えます。そこに、コミカルでユーモラス、かつシニカルな社会風刺、政治風刺、さらに宗教的なテーマ等も綴ったグリフの歌詞が乗っかります。また、彼らはウェールズの文化、言語に対しての愛着心が強く、結成当初はウェールズ語で曲を作っており、全編ウェールズ語歌詞で構成されたアルバム『Mwng』も発表しています。(英語でのインタビューやライブのMCもかなりウェールズ訛りが強く、曲の中にもそれは表れています。)

SFAはまさに唯一無二の独自の個性を放ち、根強い人気を誇る素晴らしいバンドです。’90~’00年代のUKロックを語る上で、決して外すことのできない存在と言えるでしょう。

ちなみに、グリフはアニメやコミックといったポップ・アートに関心が強く、日本のサブ・カルチャーにも造詣が深いことで知られています。また、最近はどうか知りませんが、彼はライブでジュウレンジャー(パワーレンジャー)のフルフェイスを被ってパフォーマンスをするのが恒例でした。(笑)

アルバムについて

『Rings Around The World』は5thアルバムとして2001年にリリースされ、SFAの代表的なアルバムとして語られている傑作です。ポップスから、プログレやパンク、エレクトロニカ、テクノ、さらにはデスメタルまで、ありとあらゆる音楽的要素が盛り込まれた多彩なアルバムと言えるでしょう。このアルバムは全英チャートの3位に輝き、商業的にも大成功を収めています。

多彩なサウンドもさることながら、グリフの歌詞も多彩なテーマを扱っており、アルバムに深みを与えています。冒頭の”Alternate Route To Vulcan Street”では、国境や民族で分断された地球について、ピアノとストリングスに合わせてゆったりとしたテンポで歌い上げます。2曲目の”Sidewalk Serfer Girl”では、軽快なテクノポップとハードコアパンクの間を行き来しながら、侵略され保護区に追いやられたネイティブアメリカンについて歌っています。”Presidential Suite”では、非常に美しいサウンドに乗せてクリントンとエリツィンという二人の大統領を痛烈に風刺し、”Run! Christian, Run!”では、キリスト教が犯してきたさまざまな破壊や殺戮について歌っています。

アルバムタイトル曲である”(Drawing) Rings Around The World”は、携帯電話やインターネットといったツールが支配した現代の世界について、コミカルに、リズミカルに歌い上げた秀作です。これら以外にも、”It’s Not The End Of The World”や、”Receptacle For The Respectable”、”Juxtapozed With U”など、このアルバムは本当に多くのポップな秀作で埋め尽くされており、まさに良盤と言えるでしょう。

“(Drawing) Rings Around The World”—Youtube公式チャンネルより
“Receptacle For The Respectable”—Youtube公式チャンネルより
“Presidential Suite”—Youtube公式チャンネルより

このアルバムで僕が最も優れていると思うのは、「とにかくすべてが優しいサウンドである」という点です。これはこのアルバムに限った話ではないのかもしれませんが、SFAの音楽は全てに対して寛容で、人を優しく包み込むような心地よさを感じる曲が多いのです。それを上手く論理的に表現するのは難しいのですが、一見深刻な重いテーマを扱った曲があるとしても、どこか人間の愚かさに対する温かみや慈しみを感じますし、「とにかくみんなまあなんとか仲良くやっていこうよ」という姿勢が一貫して伝わってきて、聴く者に安心感を与えてくれます。なぜこのアルバム、『Rings Around The World』が評価され、人々に受け入れられ、僕が今でも聴き続けているのかというと、最終的にはこの「安心感」を得たいからなのではないかと思います。

思い出

僕がSFAを知ったのは、高校生の時に友人に薦められ、このアルバムを借りたのがきっかけでした。それから僕は彼らの音楽にすっかり魅了され、のめり込み、ライブに行くほどのファンになりました。大学生時代に、恵比寿のリキッドルームに2度行ったのをよく覚えています。彼らのライブは非常に質が高く、サービス精神にも溢れており、ファンを本当に愛してくれていることが伝わってくるものでした。本当に至福の時間を味わうことができました。最高のバンドだと思いました。心の底から。

大学生当時、僕は世界中の大学生と同じように、常に何かに苦悩していました。今となっては何にそんなに苦悩していたのかもよく覚えていないのですが、とにかくそんな時に、SFAの音楽にかなり助けられていた気がします。何かの問題に直面した時、このアルバムの”It’s Not The End Of The World”を聴くと彼らは「少なくとも世界が終わるわけじゃないんだから」と言ってくれましたし、誰かに憤りを感じた時、”Juxtapozed With U”を聴くと、「君は寛容にならなきゃ、君が憎んでいるすべての人に対して。僕は君を愛していないけど、それで君に敵対したりしないよ」という歌詞によって寛容な気持ちになれました。そして、僕が観に行ったライブの最後の最後で、グリフは「正直に生きろ」と日本語で書かれたメッセージボードを高々と掲げていたました。それを見て僕は、なんだか随分と救われた気分になったのを今でも覚えています。

彼らの音楽を聴いていると、不思議と僕は穏やかで寛容な気持ちになれます。そして時々、なぜだか泣きそうになります。泣かへんけど。

気になった方は是非アルバムを買って聴いてみて下さい。

決して聴いて損のない良盤です。

筆者プロフィール
この記事を書いた人
しんのG

高校野球を年間60~90試合ほど現地観戦している関西在住の高校野球ファンです。近畿の高校野球の話題を中心に、ライト層からコア層のファンまで楽しめるような有益なブログを目指して投稿していきたいと思います。
また、音楽も好きなので、音楽関連の想いも綴っていきたいと思います。宜しくお願いします。

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