「夏の甲子園」の暑さ対策についてガチファンが思うこと / その① 大会批判への見解

甲子園球場 高校野球

こんにちは!

つい先日(4/19)、高野連が暑さ対策として今年の夏の選手権大会における二部制の試験導入を決定しました。突然ながら今回は、近年叫ばれ続ける夏の甲子園の”酷暑”問題について採り上げ、真剣に考えたいと思います。夏の甲子園廃止論者もちらほら現れている現代において、夏の高校野球を存続させるためにはどういう対策が必要なのでしょうか。何ができて、何ができないのでしょうか。生粋のガチファンは一体どう思っているのでしょうか。投稿を複数回に分けて持論を述べていきますので、どうぞ宜しくお付き合いください。

2023夏開会式

近年、問題視され続ける「夏の甲子園」

近年、地球温暖化を通り越して「地球沸騰化」が叫ばれるほど夏が暑くなっていますが、甲子園では毎年夏の選手権大会が行われており、全国の多くの高校野球ファンがこの季節を楽しみにしています。しかし一方では、猛威を奮う”酷暑”により夏の選手権大会の開催を危ぶむ声が急速に高まってきており、一部メディアやネットにおいて高野連が批判の的に晒される事態が起きてしまっています。「熱中症警戒アラートが出ているのに大会をやるのはおかしい!」「選手がかわいそうだ!」「虐待だ!」といった意見です。
夏の甲子園に行ったことがある人はわかると思いますが、確かに夏の晴れた日の甲子園は、めちゃくちゃ暑いです。特に、最も気温が高くなる正午~15:00の時間帯は、灼熱地獄です。命の危険すらあると思うこともあります。グラウンド上の体感温度もかなり高いでしょう。

僕は気象学の専門家ではないので細かい気象の話はここではできませんが、僕が小学生~中学生ぐらいの頃に行っていた頃(’90年代)と比べると、今の甲子園は本当に暑くなった気がします。また、日本スポーツ協会が定めている「熱中症予防のための運動方針」において、甲子園の一日の最も暑い時間帯(正午~15:00)は、「運動は原則中止」の指標に当てはまることもあります。
昔は「夏の甲子園は暑いものだ」「暑い中必死で白球を追いかける姿が美しいんだ」などと言いながら看過されてきた選手権大会も、そうは言っていられない時代に突入してしまっているのです。

とは言うものの、ファンとしては夏の甲子園というものはやはり格別で、いくら暑かろうが観たいものですし、大会が永遠に続いていくことを願っています。これはきっと、高校野球が大好きな人こそ強く抱く本音だと思います。

そのような中で議論渦巻く酷暑問題ですが、今回は一高校野球ファンである僕なりにこの論争について考察し、持論を述べたいと思います。この問題に関しては人によって色んな見解があり、何が正解なのか結論が出ないと思いますので、僕のような考え方の人もいるんだなぁといった程度に読んでいただければ幸いです。

甲子園

そもそもなぜ高校野球だけ?という疑問

まず、夏の甲子園を批判する人たちの割合は、高校野球にそこまで深く興味はないけど高校球児の身を案じている人と、高野連嫌いの人、ただ何にでもケチをつけ批判したいネット民が大半を占めています。なぜそう言えるのかというと、”彼ら”は批判ばかりを繰り返しますが、現実的な対策案を出さない、もしくは出せないからです。僕はこれまでネット上で語られる様々な意見や記事に目を通してきましたが、ほとんどが感情的で合理性に欠いた意見や現実味のないトンデモ論ばかりであり、高校野球事情に関して無知であることを露呈するような批判ばかりでした。例えば、「ドームでやれ」という意見などがそうです。現実的に夏の選手権をドームで開催するには乗り越えるべき多くの障壁があり、非常に困難であることは少し調べればわかることなのですが、批判者たちは実現に向けた具体案を出すことのないまま、軽々しくこれを連呼します。

こうした最近の”甲子園批判”のトレンドの中でまず僕が抱く疑問は、「そもそもなぜ夏の甲子園だけが批判されるんだ?」というものです。ネット上では夏の甲子園への批判記事ばかりで賑わっていますが、真夏に行われている屋外競技は当然ながら野球だけではありません。学生の夏休みにあたるこの時期は全国各地の至る所であらゆる部活動が行われており、真昼間に運動している人は五万といます。インターハイもこの時期に開催されており、サッカー、テニス、陸上競技、ホッケーなど、運動量が多いスポーツが高校野球よりも過密な日程で行われ、毎年熱中症で何人も病院へ救急搬送される事態が発生しています。にも関わらず、批判論者たちは何故かそうした事実を取り上げず、夏の甲子園ばかりに争点を当て、批判します。真夏の炎天下での運動を批判するなら、高校野球だけでなく屋外で行われるすべての部活動に対して声を上げるべきであり、その批判対象は高野連ではなく文部科学省や厚生労働省、政治家たちなのではないか、と僕は思うのですが、夏の甲子園は注目度が高く目立つせいか、批判の嵐に晒されてしまいがちです。全試合テレビ中継が行われる夏の選手権はファンだけでなく一般人の目に触れる機会が多いため、単純に球児が「かわいそう」と思われたり、逆張りを好むクレーマーたちの格好の餌食となりやすいのです。
このような背景もあって、僕は酷暑問題に関して夏の甲子園だけを批判する意見に、正直言ってうんざりしています。夏の甲子園の廃止を唱えるのであれば、同時に真夏のスポーツ活動をすべて一律に禁止するよう訴えるべきだと思います。(それでも僕は、「やめたら全部解決」という考え方は嫌いですが。)

本当に選手は危険で「かわいそう」なのか

夏の甲子園を観ていると、炎天下で汗だくになって試合をしている姿は時に過酷に映りますが、当の選手たちはどう感じているのでしょうか。これについては野球経験者の恐らく大半は、「練習よりは楽」と答えると思います。野球というスポーツは瞬発的な動作を間欠的に行うため、投手を除く大半の選手の運動量は少なく、また攻守交代により断続的に日陰のベンチで水分補給し、休むことができます。もちろん暑さは感じるでしょうが、試合中はアドレナリンが分泌されていることもあり、過酷さを感じることはあまりなく、練習の方がよっぽど辛いと感じる選手が多いと思います。少なくとも僕の周囲の野球経験者は、皆そういう意見でした。夏の甲子園の裏では、地方大会で敗れたチームは新チームを結成し、真昼間に厳しい練習をしたり、練習試合も1日2試合行ったりしています。兵庫県など、早くも秋季大会が始まる地方もあります。甲子園で試合をしている選手よりも、その他の大半の高校球児の方がよっぽど過酷な環境下にいると捉える見方もできるでしょう。

また、甲子園に出てくるような強豪校の選手たちは、一般人よりも断然暑さに慣れており、スポーツ科学が進んだ今の時代は指導陣も熱中症対策のノウハウを学んでいます。甲子園では試合前に理学療法士により選手たちの体調確認やチーム関係者への熱中症対策の説明も行われています。これらのことから、甲子園で1試合をこなす危険性については、実は外野が騒ぎすぎなだけであり、きちんと熱中症対策をとりさえすればそこまで過度に問題視する必要はないのでは、と僕は思います。もちろん現状維持で良いとも思いませんが、大会自体をやめろという議論は軽率すぎるのではないでしょうか。

さらに、「選手がかわいそう」という意見も的外れで、当の本人たちには刺さらないでしょう。彼らは甲子園で試合がしたくて出場しており、暑いからイヤだ、など恐らく微塵も思っていません。選手ファーストで考えるなら、むしろ甲子園で野球をする機会を奪うことの方がよっぽどかわいそうです。もちろん、感情だけが先走りしがちな子供の危険性を考慮し、安全策を施すのが大人の役目ですが、選手の意向を無視した過度なルール作りは若者の野球離れを招く要因になるため、避けるべきでしょう。

かと言って、油断していいという訳ではありません。近年は開会式で体調不良を訴え倒れる生徒がいたり、試合中に足を攣る選手が増えました。これは一般的に暑さによる熱中症の危険性が指摘される兆候ですが、温度ではなく湿度が原因だったり、緊張や力み、水分の過剰摂取や体の冷やしすぎなどの複合的な要因が考えられ、なかなか根本的な解消が難しいです。

このような熱中症への対策として、高野連は近年様々な改革を実施してきました。投手の球数制限導入を皮切りに、給水タイムの実施、延長戦のタイブレーク導入、白スパイクの解禁、クーリングタイムの導入、ベンチ入り人数の増員による選手の負荷軽減、そして今年の二部制の試験導入などが矢継ぎ早に決定され、ここ10年ほどで高校野球は大きく変化しています。高野連と言えば昔は保守的で変化を好まない組織というイメージが強かったのですが、今の高野連は賛否は別としても外野からの批判にきちんと向き合っており、むしろかなり柔軟な組織になったのではと僕は感じています。

昔に比べると、今の高校球児はかなり「守られた存在」であることは間違いありません。

甲子園

おわりに:外野の騒音にどう対処するか

夏の甲子園でむしろ危険なのは、実は選手ではなく応援団や観客の方なのでは、という意見も見られ、これはまさしくその通りだと思います。甲子園のアルプス席、外野席は昼間は日陰となる場所がほぼなく、長時間炎天下に晒されます。本当に溶けてしまうような暑さです。ですが、現在の甲子園球場はコンコースにダイキンの業務用エアコンが大量に設置されており、耐えきれなくなると冷房の前で涼み、熱中症を防ぐことができます。また、甲子園球場の所有者である阪神電鉄は、2025年オフより銀傘をアルプス席まで拡張することを決定しています。
ここまで述べてきたように、夏の甲子園は確かに危険な暑さではあるのですが、試合環境、観戦環境もそれに合わせて現在進行形で改善されています。野球という競技の特性もふまえて考えると、僕はどうもこの酷暑問題については外野が過剰に騒ぎすぎなのでは、という気がしてなりません。そしてまた、高野連もこれらの外野の声に怯みすぎなのでは、という思いがあります。高野連がいくら対策をしようが、ノイジーマイノリティーの声は永遠に止むことはありません。一つの対策を実施しても、次々と問題を掘り起こし、もっともっとと要求してきます。こうした外野の声を聞きすぎるとキリがなくなりますし、過度な規制はファン離れを引き起こし、ひいては野球人気の低下にも繋がってしまいます。外野の声を無視しろ、とまでは言いませんが、できることをできる範囲でやりつつ、過度な要求、無理な要望にはきちんと説明をした上で毅然とした対応をとるべきです。

アマチュアスポーツとしては世界的にも類を見ないほどの大人気コンテンツである高校野球は、球児、周囲の大人、ファンの三者の絶妙なバランスの上で成り立っています。今のこのバランスをもうこれ以上崩してほしくない、というのが、一ファンとして高校野球と甲子園を守りたいと考える今の僕の本音です。今後は批判ばかりではなく、もっと建設的な議論が展開されることを望んでいます。

さて、ここまで長々とお付き合いいただきありがとうございました。次回は、夏の高校野球の「ドーム開催論」の是非について論じたいと思います。興味のある方もそうでない方も、良ければまた是非ご一読ください。

筆者プロフィール
この記事を書いた人
しんのG

高校野球を年間60~90試合ほど現地観戦している関西在住の高校野球ファンです。近畿の高校野球の話題を中心に、ライト層からコア層のファンまで楽しめるような有益なブログを目指して投稿していきたいと思います。
また、音楽も好きなので、音楽関連の想いも綴っていきたいと思います。宜しくお願いします。

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