白球の追憶#1 先頭打者&サヨナラホームラン/明石商vs智弁和歌山(’19春)

野球ボール 高校野球

このコーナーでは、僕が過去に現地観戦した高校野球の数多ある試合の中で、特に印象に残っている試合を備忘録として振り返り、紹介していきます。

記念すべき第一試合目は、センバツ開幕も近いということで、2019年のセンバツ(第91回大会)準々決勝の明石商(兵庫)vs智弁和歌山(和歌山)の試合を振り返っていきたいと思います。

なお、自分の記憶とメモをベースに語っていきますので、事実誤認や勘違いも出てくるかと思いますが、その点は予めご容赦ください。

試合終了時写真
試合終了時。筆者撮影の興奮でブレブレの写真。

背景

2019年3月31日、第91回センバツ大会準々決勝第4試合で、明石商vs智弁和歌山の対戦が行われました。兵庫県内で着実に力をつけ、県内トップレベルに台頭した狭間監督率いる明石商と、名将・高嶋監督勇退後初のセンバツとなる中谷監督率いる強豪・智弁和歌山の一戦です。智弁和歌山は前大会の準優勝校であり、明石商は前年秋季近畿大会で準優勝を果たしました。実力校同士の対戦です。

この試合、明石商には水上、中森、来田、智弁和歌山には黒川、東妻、細川、小林という、後にプロ入りする選手が数多く出場しており、今思えば豪華でものすごくハイレベルな試合だったと言えます。

実はこの両校、この大会前に前哨戦とも言える一戦を交えていました。2018年、ほっともっとフィールド神戸で行われた秋季近畿大会準決勝です。この試合ではなんと、明石商が12-0(5回コールド)で智弁和歌山を圧倒していたのです。もっとも、智弁和歌山の「神宮拒否力」は高校野球ファンの間では有名で、センバツ当確となるベスト4進出を果たしたため初めから勝つ気がなかったのではないか、という声もありますが、それでも公立校が名門・智弁和歌山をボコボコにする様は見る者を非常に驚かせました。僕はこの試合も現地で見ていましたが、明石商の打線が面白いように繋がり、あれよあれよという間に5回で終了したのには唖然としました。智弁和歌山の選手たちもさすがにこの敗戦は悔しかったでしょう。

リベンジに燃える智弁和歌山と、迎える明石商。まさに注目の一戦です。

神宮拒否力・・・地区大会優勝者が集う明治神宮大会に行かない(行きたくない)こと。明治神宮大会は寒さの中での試合となり、怪我のリスクがあることと、チームが全国の目にいち早く触れるためライバル校に研究されるリスクがある等のデメリットが指摘されており、地区大会でセンバツ当確ラインに達した後は神宮大会に参加しないようあえて優勝しないという強豪校が一定数存在すると言われています。あくまでファンの間で囁かれていることであり、真相は当事者たちしか分かり得ません。

試合展開

試合は開始からいきなり動きました。立ち上がりに課題がある先発中森が制球を乱して四球を連発し、智弁和歌山が初回にあっさりと先制します。しかし、明石商はその後のピンチを凌ぎ、なんとか最少失点で抑えます。その裏、明石商はトップバッター、来田の一振りですぐさま追いつきます。ライトスタンドへ緩やかな放物線を描きながら飛びこむ、先頭打者ホームランでした。明石商はさらに智弁和歌山の先発池田の立ち上がりを攻め立て逆転に成功し、2回の裏にも1点を追加します。智弁和歌山はここで投手を小林に交代します。

2点を追う智弁和歌山は、5回に連打で同点に追いつきます。この試合、前半こそ動きましたが、その後は両チームともにチャンスを活かせず、無得点に終わります。見ている感じ、チャンスを活かせないというよりは、ピンチを凌ぎ合っている印象でした。特に智弁和歌山の2番手投手小林はしっかりと要所を抑えるナイスピッチングでした。

試合は、9回裏に劇的な幕切れとなりました。先頭・来田が真ん中に甘く入った小林のストレートを振り抜き、ライトスタンドへ弾丸ライナーのサヨナラホームランを放ったのです。この結果、4x-3で明石商が智弁和歌山を破り、初のベスト4進出を果たしました。まさに、来田で始まり来田で終わった試合となりました。一試合で先頭打者ホームランとサヨナラホームランを放ったのは、甲子園の長い歴史の中で春夏通じてこの時の来田が初めてでした。

敗れた智弁和歌山は秋の雪辱ならず、無念の敗戦となりました。

チーム123456789
智弁和歌山1000200003
明石商210000001x4
試合スコア

思い出

この日は準々決勝のため4試合日であり、かつ第2試合の龍谷大平安-明豊の試合が延長戦となったため、第4試合の開始時間は遅く、ナイトゲームとなりました。しかし、近畿勢同士の注目カードということもあって、観客の数は比較的多かったです。雰囲気は最高でした。とにかく勝敗がどちらに転んでもおかしくない、拮抗した好試合となりました。

特に、同点で迎えた9回は見応えがありました。最終回、なんとしても点が欲しい智弁和歌山応援団のボルテージは最高潮で、統率のとれた声援が一際大きくなり、迫力が凄まじかったです。そして、一死一二塁の勝ち越しのチャンスを迎える智弁和歌山。ジョックロックが夜の甲子園に響き渡ります。そんな中、明石商・中森くんは続く打者をセカンドゴロのダブルプレーに抑え、ピンチを脱します。球場は沸き上がり、この瞬間に流れが一気に明石商に傾くのを感じました。

9回裏、トップバッターはこの日先頭打者ホームランを放ったプロ注目の来田くんです。誰もが長打を期待し、明石商応援団は最初からアゲアゲホイホイで全力応援をします。来田くんは早々に2ストライクと追い込まれますが、何かやってくれそうな雰囲気をムンムン漂わせていました。この時僕は、一緒に観ていた友人に「来田は追い込まれてからも強いねん」と呟いたのを覚えています。そして2ストライク2ボールとなった5球目、小林投手の投球がキャッチャーの構えよりも内側に甘く入り、来田くんはそれを見事に捉えます。打った瞬間それとわかる完璧なホームランでした。弾丸ライナーがライトスタンドに矢のように突き刺さり、一瞬にしてゲームセット。球場は沸きに沸き、大盛り上がりの中明石商が劇的勝利を収めました。

僕はあまりの打球の鋭さに愕然とし、大興奮の後暫く放心状態となりました。それぐらいこのホームランは僕にとって衝撃的だったのです。これまで高校野球を観戦して数多のホームランを見てきましたが、僕の中ではこの時の来田くんのホームランが今でも一番シビれた最高のホームランとなっています。

試合後、球場から阪神甲子園駅まで歩く途中で、駅前のマクドナルドに智弁和歌山の生徒が殺到し、長蛇の列を成していました。智弁和歌山の生徒が試合後すぐさまマクドナルドに駆け込む様子を僕はそれまで何度も見てきたので、その時僕は近くにいた智弁和歌山の生徒に事情を聞きました。帰りのバスの中でみんな食べるのだ、とその生徒は答えてくれました。さすが甲子園常連校、ファストフード店の場所も時間の使い方も熟知しています(笑)

その後、まだ興奮冷めやらぬ僕は帰る気になれず、駅前の白木屋で友人と酒を飲み、ホームランの余韻にしばらく浸っていました。この日はセンバツ観戦歴の中でも特に思い出に残る、素晴らしい一日でした。

おわり

筆者プロフィール
この記事を書いた人
しんのG

高校野球を年間60~90試合ほど現地観戦している関西在住の高校野球ファンです。近畿の高校野球の話題を中心に、ライト層からコア層のファンまで楽しめるような有益なブログを目指して投稿していきたいと思います。
また、音楽も好きなので、音楽関連の想いも綴っていきたいと思います。宜しくお願いします。

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