こんにちは!今日は前回の投稿に続いて、もう少しだけ今年のセンバツについて語ります。
今回は、我らが兵庫の盟主である報徳学園について語りたいと思います。今大会、トーナメントで非常に厳しいブロックに入った報徳ですが、並み居る強豪相手に相次いで劇的な勝利を収め、見事準優勝を果たしました!まさに大活躍を見せてくれた今大会の報徳、実は大会中に対戦相手のいろんな記録をストップしてきた”ストッパー”だったのですが、一部の高校野球ファン以外にはあまり知られていないかもしれないので、一体どういうことなのか、この記事で解説していきたいと思います。どうぞ宜しくお付き合いください!
報徳学園について
報徳学園については、今さら紹介する必要もないと思います。高校野球ファンなら誰でも知っている兵庫県のスポーツ名門校で、学校は甲子園の地元西宮市内にあります。中高一貫の私立男子校です。主な卒業生に、元近鉄の金村義明や、現広島の小園海斗などがいます。俳優の森山未來や、元陸上短距離走者の伊東浩二氏も報徳出身です。あと、もんたよしのりも報徳です。
甲子園出場は今大会を合わせて春22回、夏15回を誇り、春2回、夏1回と全国制覇を成し遂げています。まさに兵庫の盟主であり、兵庫野球界ではオールドファンから新規ファンまで、幅広い層から人気と信頼を得ている学校です。昔から終盤に逆転して勝利を収める印象が強いことから、「逆転の報徳」とよく呼ばれていますね。伝統的に堅い守備から攻撃のリズムを作り、バントや機動力を絡めて粘り強く勝ちにいく野球が特徴です。
報徳が甲子園に出てくると、大抵の場合、初戦で負けるか上位進出するかの2択になります。期待されている年に初戦で伏兵にコロッと敗れることもしばしばありますが、初戦に勝ちさえすれば必ずと言っていいほどベスト8以上に進出してくれます。まさに報徳の魅力はそこにあり、彼らが甲子園に出ると兵庫県民の期待は大きくなります。多分、兵庫県の高校野球ファンなら誰でも一度は、「なんやかんやで、やっぱ報徳やな」と呟いたことがあることでしょう(笑)
そんな報徳学園を僕がなぜ今回”ストッパー”と呼ぶのか、次項から詳しく見ていきます。
2回戦 対健大高崎
2回戦から登場した報徳がまず対戦したのが、「機動破壊」でお馴染みの関東の猛者、健大高崎でした。お互い機動力のあるチームカラー同士の対戦で、戦前は1・2回戦屈指の好カードと言われていました。
この健大高崎、2011年夏に初めて甲子園の土を踏んでからこれまで7回出場していたのですが、実は初戦で負けたことがなく、自身初戦7連勝という記録を持っていました。そのデータがあるせいか、健大高崎有利の声もちらほら聞こえてきていましたが、いざ試合を終えると、7-2で報徳が快勝。この試合で報徳は、見事健大高崎の初戦連勝記録を7で”ストップ”したのです。
3回戦 対東邦
3回戦の相手は愛知の強豪・東邦でした。秋の東海王者です。この強豪対決、名前だけ見てもワクワクしますね。また、愛知対兵庫の試合は歴史的に見ても接戦が多く、激戦区同士ということもあり実力が拮抗していますので、なおさら楽しみです。
この東邦ですが、今回は2019年に優勝した時以来の4年ぶりのセンバツ出場となりました。ということで、2019年に5連勝し、今大会で2勝を挙げ、東邦はこの時点で自身センバツ7連勝中だったのです。そんな東邦との対戦は、延長10回タイブレークの末報徳が見事サヨナラ勝ちを収めました。この試合で報徳は、東邦のセンバツ連勝記録を7で”ストップ”したのです。
準々決勝 対仙台育英
死闘の末、3回戦を突破し勢いづく報徳。準々決勝の相手は、前年夏、東北勢初の全国制覇を果たした優勝候補・仙台育英です。前年夏に優勝しているということはここまで甲子園で連勝し続けているということを意味し、夏に5連勝、そして今春2勝と、7連勝中でした。さらに、新チームも東北大会を制しており、夏春連覇の偉業への期待も非常に高まっていました。
そんな仙台育英を相手に、報徳は堂々たる試合内容で互角以上に渡り合いました。3-1リードの9回表二死から、センターのまさかの落球を皮切りに追いつかれ、一時は本当にどうなることかと思いましたが(いつぞやの仙台育英vs開星の試合を思い出したファンも多いはずです)、タイブレークの末逆転サヨナラでなんとか勝ちきることができました。非常にハラハラドキドキの試合展開でしたね。
この勝利により、報徳は仙台育英の甲子園連勝記録を7で“ストップ”し、夏春連覇の夢も絶ちきることになりました。ついでに言うと、兵庫県勢は’95年春に神港学園が仙台育英に勝利して以降は、三度甲子園で対戦していずれもボコボコにやられていたので、その憂さまで晴らしてくれる結果となりました。
準決勝 対大阪桐蔭
2試合続けて劇的な展開で死闘を制し、ついに準決勝まで勝ち上がった報徳。対戦するのは、優勝候補大本命の横綱・大阪桐蔭です。もうこの時点で、報徳どんだけ籤運悪いねん、という感じですね。前年秋の近畿大会では決勝で対戦し、惜しくも0-1で敗れた相手であるため、リベンジを誓って臨む一戦となりました。世代No.1サウスポーと評される前田悠伍くんを擁する大阪桐蔭は前年の覇者であり、ここまでセンバツで8連勝中、さらに春連覇を狙っていました。
この試合、前田くんは先発ではなかったのですが、3回に大阪桐蔭が一挙5点を先制し、ワンサイドゲームの様相を呈します。僕はこの時、やっぱり大阪桐蔭は強すぎて敵わんなぁ・・・と絶望していたのですが、選手たちはもちろん諦めていませんでした。報徳はその裏すぐさま2点を返し、7回にも2点を返して、同点のチャンスというところで大阪桐蔭・前田くんをベンチから引きずり出します。すると、昨秋の敗北から一冬越えて大きく成長した報徳は本領を発揮し、前田くんを攻め立てて同点に追いつくと、8回に2点を入れてついに試合をひっくり返しました。「逆転の報徳」の神髄を体現する、見事な逆転劇であり、リベンジ劇でした。
この勝利により、報徳は大阪桐蔭のセンバツ連勝記録を8で“ストップ”し、春二連覇の夢も絶ちきることになりました。
決勝 対山梨学院
強豪を次々になぎ倒し勢いに乗る報徳でしたが、肉体的にも精神的にも疲労が溜まっていたのか、最後の最後で力尽き、山梨学院に敗れました。この試合では、報徳が負の面で”逆ストップ”をかける結果となりました。それが、兵庫県勢の決勝戦連勝記録です。
兵庫県勢が甲子園の決勝まで進んで負けたのは、1951年、第23回春決勝の鳴尾が最後でした。それ以降、兵庫県勢は71年間で春夏合わせて7回決勝に進出し、実はすべて勝利して優勝していたのです。この記録を今回の決勝でさらに8連勝に更新したいところでしたが、それは残念ながら”ストップ”がかかってしまいました。
兵庫県勢ベスト4連敗記録までも”ストップ”
実は兵庫県勢は、’02年春に報徳が最後に優勝して以来、春夏合わせて9回ベスト4に進出していたのですが、すべて敗北しており、準決勝で9連敗という屈辱的な記録を更新中でした。今大会、報徳がベスト4に進出した時点でも、相手が大阪桐蔭ということに加え、この兵庫が抱える「ベスト4の壁」問題が大きく立ちはだかっていました。しかし、苦節21年を経て、報徳がこの「呪い」のようなジンクスを自ら見事に破ってくれました。こればかりは本当に、報徳様様です。こういうところが、さすが報徳、やっぱり報徳と言われる所以なのでしょうね。以下の表で、兵庫県勢の準決勝の結果を振り返りましょう。
年(大会) | 回戦 | チーム | スコア | 対戦相手 | 備考 |
2002年 (74回春) |
準決勝 | ☆報徳学園 | 〇7-1 | 福井商 | ☆優勝 |
2003年 (75回春) |
準決勝 | 東洋大姫路 | ●1-5 | ☆広陵 | ☆優勝 |
2004年 (76回春) |
準決勝 | 社 | ●2-3 | ★愛工大名電 | ★準優勝 |
2005年 (77回春) |
準決勝 | 神戸国際大付 | ●6-8 | ☆愛工大名電 | ☆優勝 |
2008年 (80回春) |
準決勝 | 東洋大姫路 | ●2-4 | ☆沖縄尚学 | ☆優勝 |
2009年 (81回春) |
準決勝 | 報徳学園 | ●1-4 | ☆清峰 | ☆優勝 |
2010年 (92回夏) |
準決勝 | 報徳学園 | ●5-6 | ☆興南 | ☆優勝 |
2017年 (89回春) |
準決勝 | 報徳学園 | ●4-6 | ★履正社 | ★準優勝 |
2019年 (91回春) |
準決勝 | 明石商 | ●2-4 | ☆東邦 | ☆優勝 |
2019年 (101回夏) |
準決勝 | 明石商 | ●1-7 | ☆履正社 | ☆優勝 |
2023年 (95回春) |
準決勝 | ★報徳学園 | 〇7-5 | 大阪桐蔭 | ★準優勝 |
こうして見ると、本当に本当に長く苦しい道のりでした。対戦相手がその後ほぼ優勝しているところや、9敗中、ライバル愛知県勢に3度も惜敗を喫し、向こうが2回優勝しているところなんかが特に悔しいですね。履正社にも二度跳ね返されています。また、9敗中、報徳は3回もベスト4に挑み、惜敗しているところもドラマ性を感じさせますね。優勝した偉大な先輩に追いつこうともがき、あと一歩のところで敗れ続け、代々の夢を後輩に託し、今年の春にようやく芽吹いた、といった感じでしょうか。本当によく頑張ってくれました。
最後に
ここまで、過去データと照らし合わせながら今大会の報徳の活躍を振り返ってきました。いかがでしたでしょうか。このように様々なデータを収集してあーだこーだ言うのも、長い歴史を誇る高校野球の楽しみ方の一つですね。報徳の応援歌の中で、自らのチームカラーと合わせて選手を「緑の戦士」と称する掛け声がありますが、今大会の報徳はまさに、“緑のストッパー”と化していたのです。
僕はいつも、準々決勝が終わるともう甲子園には行かなくなるのですが、今大会は雨天順延で土曜日決勝となり、報徳が勝ち進んだため現地に観に行きました。センバツの決勝は初めてで、甲子園の決勝自体も30年ぶりの観戦でした。兵庫県勢が本当に久々に甲子園の決勝まで勝ち上がったことがとても感慨深く、試合が始まる時点で既に僕は感動していました。結果は準優勝でしたが、今大会を最後まで盛り上げ、楽しませてくれた報徳には本当に感謝しています。ありがとう!
いつかまた、できれば近いうちに、兵庫県勢が夏の決勝の舞台に立ち優勝することを心から願っています。
おわり
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